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源流なび Sorafull

新刊「出雲王国とヤマト政権」と系図について

令和の時代がスタートしましたね。

上皇さまご夫妻のにこやかなお姿も少しだけ拝見でき、今も言葉に尽くせぬ感謝の想いが溢れます。

天皇皇后両陛下はこれまで以上に凛々しいご様子で、新たな時代の瑞々しさを感じずにはいられません。上皇さまご夫妻が繋いでくださった令和の時代が、両陛下のもと、和やかな笑顔に満ち、たくさんの花を咲かせ続けますように。

 

昨日は「斎田点定の儀」が行われ、11月の大嘗祭で神々に献上するお米を育てる地方(東の悠紀と西の主基)が決まりました。栃木県と京都府です。

儀式ではアオウミガメの甲羅を用いる古来の占い、亀卜きぼくが行われました。甲羅を24㎝×15㎝、厚さ1㎜ほどの五角形(駒形)に加工し、表に溝を彫っておきます。それを波波迦木(ウワミズザクラ)の小枝をくべた火にかざし、ヒビの入り具合から地方を決定するそうです。昨夜のNHKニュースの説明では、火にかざしながら少量の水をかけていたようでした。(儀式は非公開です)

この波波迦木は古事記の天の岩戸開きにも記されています。天香具山に棲む男鹿の肩甲骨を、同じく天香具山に生える波波迦木の火で焼いて占うとあります。太占ふとまにですね。日本ではもともとこの太占が行われており、のちに中国、殷の亀卜がそれに替わりました。出雲伝承はこれらの占いについては語られていません。

ちなみに天香具山は記紀では霊山、聖なる山の扱いです。出雲伝承では天香語山命五十猛命)が祀られており、祀ったのは息子、初代大和大王の天村雲命としています。村雲は大和地方で稲作を広めた指導者です。

昨日の亀卜に使われた波波迦木も、天香具山のものでしょうか‥‥。

 

今回、宮内庁は希少なアオウミガメの甲羅の確保に1年半も前から奔走し、保全活動をしている東京都小笠原村に協力を依頼したそうです。一定量の漁が認められている中から確保したとか。さらには甲羅の加工職人の選定も慎重に行われたといいます。今や専門業者などいないのですからね。東京都のべっ甲職人の方に決まりましたが、普段はタイマイという亀を加工しているために苦心なさったようです。

亀卜は現在皇室と、長崎県対馬で地域の1年の吉兆を占うために行われているのみということです。このような遥か古からの占いが、今もって密やかに行われ、そのニュースが手の中のスマホに流れてくる。なんというか、めまいがしそうなほどファンタスティック。

 

さて、「令和」について少し。

国文学者の中西進は次のような話をされています。

大伴旅人大宰府の帥になったのは、藤原氏が一族の光明子聖武天皇の后にするために邪魔な旅人を左遷したからであり、さらに藤原氏左大臣長屋王を自害に追いやったのだと。(藤原不比等の息子らの代です)そんな中、旅人は藤原氏に書状とともに琴を贈りました。書状には「あなた方は私の軍事力を気にしているけれど、私は役に立つつもりもなく、反対にあえて戦いを望んであなたと対峙することもありません」と記されていたそうです。琴とともに送り付けたとは、カッコよすぎではないですか!

この背景を知った上で梅花の宴の序文を読むと、人の世の悲しみの中から静かに立ち上がる覚悟のようなものを感じます。それは決して折れそうな硬さではなく、やわらかで聡明さに満ちた覚悟です。

初春の令月にして、気淑く風和らぎ、梅は鏡前の粉を披き、蘭は珮後の香を薫らす

対立するふたつの勢力がある時、戦いと屈服のふたつの選択肢以外に、必ず第三の選択肢があるはずだと中西氏は言われます。それを世界に示すことができるのが日本であり、日本の務めであると。

そして万葉集が編まれた天平の時代は多くの渡来人がやってきた時代でもありました。様々な混乱を乗り越えて平和を築こうとする中で、美術や文学などの文化が栄え、平和への祈りや様々な人の偽らざる歌声が万葉集となったのだということです。令和の時代は万葉の祈りを実現する役割があるとも言われます。

万葉の祈りと言われても、少し前の自分ではピンとこなかったと思います。でも古代を自分なりに探る中で、祖先たちの祈りが私の中にも受け継がれていると感じるようになりました。天平の時代よりもずっと昔から、連綿と。この国は特定の宗教を超えた、祈りの国ですね。

 

待ちに待った新刊!

先日S様より大元出版から新刊が出ていることを教えて頂きました。ずっと待っていた本でした!

2年ほど前になりますが、絶版となっている斎木雲州著「出雲と大和のあけぼの」の再版について出版元に問い合わせたところ、タイトルは変わるけれど同じような内容で新刊を書いている人がいるので、2年ほどお待ちくださいとのお返事を頂いておりました。首を長くして待っておりましたが、このところサイトを調べるのをさぼっておりましたら、すでに発売されていたとのこと。

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 「出雲と大和のあけぼの」よりページ数もかなり増え、内容も詳しくなり、とてもわかりやすいです。第1次物部東征までですが、これまでの大元出版の出雲伝承をまとめた充実感があります。さらに新たな内容も加わっていて、例えば先ほどの大嘗祭で建てられる悠紀殿・主基殿の由来についての解説もあります。字が大きいことも有難い!ぜひ本を取り寄せてご覧になって下さいね。

またこの新刊に掲載されている出雲王家と親族関係の系図では、かねてから疑問であった「高照姫が富家と神門臣家のどちらの出身なのか問題」について、新刊では神門臣家の八千矛(大国主)と多岐津姫の娘であると示されています。「出雲と大和のあけぼの」に掲載された系図では、富家の天冬衣と田心姫の娘となっていました。本文の中でも両方の記述があったため、とりあえず系図をもとに書いてきましたが、今回の「出雲王国とヤマト政権」は斎木氏も確認されていると捉え、今後はこの系図を参考にさせて頂くつもりです。過去記事は順次訂正を加えていきます。

このことについてもご指摘下さったS様、ありがとうございました。

 

参考までに、この記事の後半に高照姫の出身問題について書いています。